【 シルバー・ウルフ 】

“ 俺は必要な人間に、必要な言葉を伝えるだけだ・・・ ”

 

本作の中で一番不思議な存在である放浪の一匹狼「シルバー・ウルフ」を演じてくれたのは横川雅志さん。「ウルフさん」は非常にキャスト決定に難航しましたが、普段から大地と太陽と共に暮らす横川さんの全身から湧き上がる説得力が最後の決め手になった事をよく覚えています。僕はこの「ウルフさん」が大のお気に入りでもあります。

 

この「シルバー・ウルフ」は通り掛かる住民に偉人の言葉を授けてくれるという、邦画ではめったに登場しない精霊のようなキャラクターであり本作テーマを担っている重要人物でもあります。原点はその名の通りネイティブアメリカンのマインドからでした。またTHE BLUE HEARTS、クロマニヨンズの甲本ヒロトさんの言葉「誰も僕には言葉を伝えてくれなかったから、僕一人でも言葉を伝える」という名言に感動した記憶からも「シルバー・ウルフ」が生まれました。彼は何一つ自分の話をしません。私達は言葉を多く使うくせに、言葉を伝える事がどんどん下手になってきている気がします。「ウルフさん」は人生に必要で、人を鼓舞し、心を支える言葉のみを口にします。何処までも言葉とは相手へ真摯な気持ちを伝える手段であった事実を、私はこのキャラクターで取り戻したかったのでした。主人公「テツオ」が「ウルフさん」に寄り添うのも、「テツオ」の未来の枝の先に「ウルフさん」が居るからかもしれません。もしかしたら「シルバー・ウルフ」は「テツオ」の心の声なのかもしれません。