【 吉岡さん 】

“ 子供と話す気はない　帰れ・・・ ”

 

藤野在住の木村 昭さん演じる将棋じいちゃんこと「吉岡さん」。この「吉岡さん」は、私の祖父代わりでもあった伯父さんがモデルとなっており、この吉岡さんの語るお話のほとんどは実話であったりします。戦前/戦中、そして戦後。疲弊した環境の中であっても伯父さんは、誠実さと厳しさの両面を忘れなかった方だったそうです。

 

伯父さんは戦後に電気料金の集金仕事もやったそうです。その際、何時行っても両親のいない家があり、毎回幼い兄と妹二人だけで出てきて「親がいないから払えません…」と言ったそうです。それがかなりの月日続き、とうとう規定の電気差し止めの期日が来たそうです。それでも親は現れない。元々居なかったのか、逃げたのかは分かりません。それでも私の故郷は雪の多い寒い地域でありましたから、伯父さんは寒そうにしていた子供を放っておけず、とうとう自分の財布からその家の電気料金を支払い続け、電気が止めるのを食い止めてしまったそうです。そしてこの話もまた、伯父さんは自分からは絶対に話してくれませんでした。伯父さんはこの話を奥様に一度だけこぼしたっきりだったそうです。「そういう訳で当分お金少なくてごめんね…」と。まだまだイケメン列伝なお話はたんまりあるのですが、そんな格好良すぎる伯父さんを、私はどうしても本作に登場させたかったのでした。