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登場キャラクター秘話 ⑬ 星野 シゲル
【 星野シゲル 】
“ 俺は・・・お前たちを不幸にはできないんだよ・・ ”
主人公テツオの父「星野シゲル」を演じてくれたのは本作制作を一手に引き受けたKURUWA.LLC、それを率いる役者にしてプロデューサーでもある盟友・結城貴史さん。元々、結城さんに父親役を考えていた訳ではありませんでしたが、子供達との触れ合いが物凄く慈愛に満ちていた事から、テツオの父を演じて頂きました。
「星野シゲル」のキャラクター性は、名前は全員異なりますが私のほとんどの作品で登場する人物像です。誰よりも誠実で愛深き男。しかし内在する脆さから何らかの逃れられない哀しみや断絶と出逢う事から、他者、そして自分自身をも追い込み、最後には物語の元凶にも変貌してしまう存在。本作でもまさにその通りの登場と言えます。
「シゲル」の名の由来は、撮影直前に他界した親戚の兄から頂きました。幼少期、それこそ撮影場所とそっくりな徳山村という山深い土地で、夏休みになると私と実兄はその村に行き、そこに暮らすシゲルさんによく遊んでもらっていました。ダムとなって沈む予定であったその土地で、シゲルさんはある意味わんぱく、簡単に言えばヤンキーでした。僕らの目線に下りてきて遊んでくれる姿勢はシゲルさんが心に持つ少年のような幼さ、そこからの優しさでした。村が沈んだ後、シゲルさんも真っ当な大人であらねばと必死に、半ば恐怖のようなものと闘っているようでした。自分の幼さを呪っていたのかもしれません。それでも何処までも優しく、嬉しい人でした。大好きでした。
本作内の「シゲル」も完璧な大人ではないでしょう。それでも残された子供の為、良き父であろうと無理をしています。その無理は視野を狭め、子供達の意向を拾えなくさせてしまう。誠実であればあるほど、人は苦しむのかもしれません。結城さんにより血肉を頂いた「シゲル」の狂おしい父親の姿は、勝手に去っていったシゲルさんの姿とも重なります。不思議なキャラが多く登場する本作の中にあって、一番「人間」であったのは「星野シゲル」だけかもしれません。